新高円寺駅前クリニックは漢方薬を一部取り扱っています。

漢方の基盤は、東洋医学の「人間の体も自然の一部」「人間は大自然の中のひとつの小宇宙」という考え方にあります。

つまり、人も自然も同じシステムで機能しており、全ては連動しているという考え方です。

 

東洋医学と漢方薬には2000年以上の歴史があります。

近代200年の間にさまざまな薬のワンピークがわかり合成できるようになりました。

しかし漢方薬はそのはるか以前より使われています。

幸か不幸か長期間のさまざまな人体実験の結果、生薬が絶妙なバランスで組み合わされ、副作用が少なく、不思議な効果を持つ薬が生み出されました。

乱暴ともとれますが、同じ漢方薬でも人により改善される症状が異なり、1つの漢方薬で同じ人間の多彩な症状が治ることがあります。

これが漢方の「妙」です。

 

「木を診て木を治す」西洋医学は一番重要です。

しかし西洋医学を補完する医療として東洋医学の出番があります。

東洋医学の治療の考え方は「森を診て、森全体をよくして、木を治す」ものとしてとらえられています。

そのため、西洋医学と違って局所的な見方や考え方で治療を行いません。

「森を診て、森全体をよくして、木をなおす」。これを人間に当てはめると「病気ではなく病人を診て、病人自体をよくして、病気をなおす」ということになります。

漢方では、一部分だけにとらわれず、原因や症状、体質など、全身の状態を統合的にとらえて治療を行います。 

 

現在使用されている漢方薬のほとんどは、2種類以上の「生薬」を組み合わせて作られています。

 

「生薬」とは、植物の茎や根、貝殻や鉱物など薬効成分をもった自然素材のこと。

漢方では、これら自然素材を蒸したり、塩水に浸して干したり乾燥させて使用しています。

 

漢方薬が有効であることがよくわかる薬としては「芍薬甘草湯」が代表です。

西洋医学では良い薬の無い「こむらがえり」は「芍薬甘草湯」が特効薬になります。

東洋医学の診断にあたる虚実、病期という”証”に関係なく用いても効果が出ます。

症状がでたら1日1回5日間程度の服用でしばらく発作が起きにくくなります。

また、「芍薬甘草湯」はこむらがえり以外にも”シクシク”、”キューッ”と表現される様々な痛みにも効果があります。

例えば尿路結石や腹痛・生理痛などです。

まさになんでもありです。

 

西洋医学の薬剤で芍薬甘草湯に近いのは「ブスコパン」でしょうか。

しかし副作用などを考えると「ブスコパン」は使いやすい薬ではありません。

やはり、漢方薬の「使いやすさ」は便利です。

 

「芍薬」の原料はボタン科のシャクヤクの根です。血の停滞・不足にともなう症状を改善し筋肉の緊張・弛緩を調整する生薬といわれています。

「甘草」の原料はマメ科のウラルカンゾウの根です。ウラルカンゾウは中国東北部が原産地で主成分はグリチルリチンであり、「強力ミノファーゲン」の主成分と同じです。気の不足に伴う症状を改善します。鎮痛・解毒作用もあります。

なぜかこの二つの生薬が1:1の比率で合わさると上記のような便利な薬になってしまうのです。

 

また「芍薬甘草湯」に「加工附子」を少し加えると「芍薬甘草附子湯」となります。

お年寄りの慢性神経痛やリウマチ、頑固な肩こりに効果を発現します。

これが組み合わせの「妙」です。

「加工附子」はトリカブトを減毒化したものであり、安全です。四谷怪談のお岩さんが伊右衛門に飲まされていたものとは異なります。

 

こう考えると、中国人はすごいことをしてきたものです。 奥が深い。

さすが論語・孟子・大学・中庸の国ですね。