新高円寺駅前クリニックはアレルギーの専門診療を行っています。

国民病とも言える花粉症をはじめアレルギー性疾患は多岐にわたります。

アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息などの何らかのアレルギー性疾患を有する人は小児の35%、成人の22%といわれています。さらに近年重症化、発症年齢の低年齢化が進み、これらは地球環境、大気汚染、居住環境、食生活、感染症の減少などが原因と考えられています。

複数のアレルギー性疾患を同時に有する患者さんも多く、アレルギー性疾患は内科、耳鼻科、皮膚科などの専門分野の枠組みを超えて包括的に診療を進めていく必要があります。

当院ではこのような視点に立って診療を行います。

 

代表的なアレルギー疾患は

アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、 アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹など

 

※ 元来アレルギー疾患は外部からの抗原に対し、過剰な免疫反応が起こることで発症します。ただしその抗原は通常生活で曝露される量では無害であることが多く(たとえば春先の花粉そのものが毒性を持っているわけではありません)、不必要に不快な結果をもたらす免疫応答が引き起こされる原因に対する治療も必要となることがあります。

 

                           

       資料 「食物によるアレルギーについて」

 

1,食物アレルギー

●食物アレルギーの症状と問診する事項(IgEによる反応、アレルギー以外の反応を見分ける)

①症状:咳、くしゃみ、かゆみ、喉頭圧、おう吐、腹痛

②摂取から症状発現までの期間

③症状の起こった頻度

④一番最近のアレルギー反応はいつか

⑤どの位摂るとアレルギー反応が出るか?最近反応が起きたときに摂取した量。

⑥症状に影響を与えるほかの因子:運動、薬物、季節、調理法

IgEによる反応は摂取直後から1時間半以内に出る。RAST陽性があてになるのはIgEが関与する反応。じんま疹、アナフィラキシー、喘息、鼻炎、口腔内アレルギー症候群などはIgEによる症状。

●食物アレルギーの頻度

・どの食品も食物アレルギーになるが以下の抗原だけで頻度は90%以上。

対象

食物アレルギーの原因

乳幼児

牛乳、卵白

小児

小麦、大豆、ゴマ、そば、ピーナッツ

成人

魚介類、果物野菜、そば、ピーナッツ

   果物、野菜は熱を通すと抗原性(アレルギーのもと)は弱くなる。

   CAP-RAST検査値と臨床的意義の相関

抗原

アレルギーが臨床的に陽性になるRAST

アレルギーが臨床的には認められないRAST

卵白

(class3)

0.6(class1)

卵白(2歳以下)

2(class2)

 

牛乳

15(class3)

0.8(class2)

牛乳(1歳以下)

2.5(class2)

<0.35(class0)

ピーナッツ

14(class3)

<0.35(class0)

魚介類

20(class4)

3(class2)

大豆

65(class5)

30(class4)

小麦

100(class6)

26(class4)

ナッツ

15(class3)

 

そば

1.26(class2)

<0.35(class0)

   例え検査が陽性であっても実際に摂取して問題がなければ、制限の必要はない。RASTは偽陽性、偽陰性が多い検査である。

   RAST値は異なる抗原で単純に数値を比較することはできない。

   治療

症例1

生後6ヶ月の乳児。母乳と粉ミルクのみを与えていたが、初めて市販の乳児用飲料(内容ラベル表示:牛乳、小麦、米、卵白、卵黄)を飲ませたところ、10分後に全身浮腫、撹拌が出現したため近医受診。CAP-RASTにて、卵白2.50(class2)、卵黄0.38(class1)、牛乳0.44(class1)、小麦18.2(class4)であった。

どのように指導しますか?

   食物アレルギーの治療は原因食物の除去が中心。間欠的な曝露により軽いアレルギー症状を繰り返しているとなかなかRAST値が下がりにくい。そのため、除去するときは完全に除去する。

   牛乳アレルギーの乳児で人工乳が必要になる場合は、高度加水分解された低アレルギー乳(森永乳業ニューMA-1など)を利用する。

   低アレルギー乳でも症状の出る場合はアミノ酸乳(明治乳業エレメンタルフォーミュラ)を用いることがあるが、高価である。

   現在は卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツは表示が義務付けられているが、工場での製造過程、レストランでの調理で混入する可能性は考える必要がある。

アレルゲン

食品

牛乳

ころものついた揚げ物、ケーキ、カステラ、クッキー、プリン、アイスクリーム、チョコ、缶スープ、シチュー、カレー

加工肉類(ミートボール、ソーセージ)、ころものついた揚げ物、麺、パスタ、マヨネーズ、タルタルソース、ケーキ、カステラ、クッキー、プリン、アイスクリーム

ピーナッツ

春巻きなどの中華、タイ料理、マーガリン、粉ミルク、アイスクリーム、クッキー、チョコ

そば

冷麺、クレープ

   薬物治療は効果は確立していないが、インタールの内服が行われることもある。

   食物アレルギーがある場合に避けるべき薬剤もある

食物

含有成分

薬物

塩化リゾチーム

ノイチームなど、市販薬にもしばしば含まれる

牛乳

タンニン酸アルブミン

乳酸菌

カゼイン

タンナルビン

ラックビー

ミルマグ

 

2、口腔内アレルギー症候群(Oral allergy syndrome:OAS

OASは生の野菜や果物などの摂取から通常5分以内に、口から咽頭部における粘膜と原因食物との直接接触により引き起こされる。主に成人に発症するが、小児ではアナフィラキシーを起こすこともある。食物抗原と花粉抗原の交叉反応といわれる。

   症状

じんま疹、血管浮腫 27

喉頭浮腫      14

胃腸症状      14

鼻炎        9

喘鳴        7

結膜炎       4

アナフィラキシー  2

   RASTは偽陰性を示すことが多い

   OASは花粉症と高頻度に合併する。OAS80%は花粉症。シラカバアレルギーの50%がOASをもつ。

   花粉等と食物抗原の関係は以下のものが知られていて、花粉のRASTは陽性になることが多い。

シラカバ

バラ科:りんごさくらんぼ、あんず、なし、もも

せり科:にんじん、せろり、パセリ、ヘーゼルナッツ、

その他:栗、じゃがいも、ほうれんそう、小麦、そば、ピーナッツ、はちみつ、キウイ

ヨモギ

セロリ>にんじん、香辛料、メロン、すいか、りんご、カモミール、ヘーゼルナッツ、ピーナッツ、キウイ

ブタクサ

メロン、スイカ、きゅうり、ばなな、カモミール、はちみつ、ひまわりの種

とまと、メロン、すいか、ピーナッツ、オレンジ、さくらんぼ、じゃがいも、セロリ、バナナ、ラテックス

スギ

トマト

ラテックス

註)

高度:アボガド、バナナ、キウイ、栗、トマト、ポテト

中等度:イチジク、にんじん、パパイヤ、マンゴー、パッションフルーツ、パイナップル、メロン、ピーチ、ネクタリン、りんご、ほうれん草、そば、シラカバ、ブタクサ、イネ科、ヨモギ、花粉

家ダニ

甲殻類

註)ラテックスアレルギー症候群:ラテックスアレルギーの35%はOASを合併する。

●治療

・抗ヒスタミン薬、重症の場合はエピネフリン(エピクイック携行も必要)

3、サバ科の魚によるヒスタミン反応

   サバ科のサバ、マグロ,カツオ、さんまの摂取によりⅠ型アレルギー類似の反応がおこることがある。

   アミノ酸のヒスチジン→腸内細菌によりヒスタミンに代謝されることと、腐敗菌が産生する物質によりヒスタミン代謝が抑えられることにより起こる。

   調理をしても変わらない。

   症状は数分後から4時間以内に発症

   じんま疹、喘鳴のほか、特徴的な症状としては頭頚部の紅潮、頭痛、皮膚の紅潮、めまい。

   RASTは通常陰性。

   治療は抗ヒスタミン薬、重症でなければ410時間で戻る。

 

4、食物依存性運動誘発性アナフィラキイシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA

   FEDIAは、ある特定の食物の摂取後約4時間以内に運動したときのみアナフィラキシーが起こり、食物摂取のみ、もしくは運動のみではアレルギー症状が認められない。

   症状

   食物摂取後4時間以内に(通常2時間以内)に運動した後、数分から1時間以内に通常じんま疹、呼吸困難、ショックが起こる。

   危険因子として喘息、アトピー素因、男性、10代が多い。

   原因の食物は小麦、甲殻類、フルーツ、牛乳、セロリ、豆腐、魚介類

   診断は食物のRASTと病歴。RASTは陰性でも否定できない。

   治療と予防

   一般のアナフィラキシーと同じ

   予防は食後4時間以内の運動回避。

 

5、食物アレルギーの自然経過

・牛乳、卵アレルギーは3歳までに多くが自然寛解。特にRASTが早期に陰性化した下場合はより安心できる。

   魚介類、ピーナッツアレルギーは80%以上で一生続くとされる。

   牛乳、卵アレルギーがあった小児は、3歳にて35%、10歳にて25%の割合で他の食物アレルギーを発症する。そのため乳児期に食物アレルギーを起こした小児は3歳までアレルギーを起こしやすい食べ物(そば、魚介類、ピーナッツ)は避けたほうがよい。

6、アレルギーの1次予防

   最低46ヶ月を母乳のみにする。

   授乳中の母親のピーナッツ制限

   人工乳は高度加水分解人工乳にする。

   離乳食は6ヶ月からアレルギー性の低いものを始める。牛乳は12ヶ月、卵は24ヶ月、ナッツ類、魚介類は36ヶ月から。

【おまけ】RAST陽性でもアレルギーが出ないのはなぜか?(blocking IgG

免疫グロブリンにはIgGIgAIgMIgDIgEがあるが、IgEは最も多いIgG30万分の1しかない。IgEは肥満細胞(ヒスタミン、ロイコトリエン、サイトカインをたくさんふくんでおり、刺激ですぐに放出する。)にくっついて粘膜や皮膚の下でアレルゲンが入ってくるのをずっと待っている。アレルゲンが入ってくるとIgEは即座にくっついて肥満細胞を刺激、ヒスタミンなどを放出する。ところが、IgEと比べて大量にあるIgGも抗原特異的なものがある場合は、IgEがアレルゲンを捕まえるよりも早くIgGが捕まえてしまい、肥満細胞は刺激されない。そのため、IgERASTが陽性でもアレルギー反応が起こらないと考えられている。

 

詳しくは→ アレルギー情報センター

 

 

 

新高円寺駅前クリニック医師によるアレルギーについての著書と学術論文です

著書

「成人の喘息:軽症 生活環境改善とβ刺激薬の使い方を中心に」アレルギー疾患を疑ったら,こう診る!medicina(医学書院出版)

 

学術論文

Okamoto M, Takeda K, Joetham A, et al. Essential role of Notch signaling in effector 

 memory CD8 + T cell  - mediated airway hyperresponsiveness and inflammation. 

J Exp Med. 2008;205:1087-97.  

Okamoto M, Takeda K, Lucas JJ, et al. Low-Dose Lipopolysaccharide Affects Lung Allergic 

Responses by Regulating Jagged1 Expression on Antigen-Pulsed Dendritic Cells. 

Int Arch Allergy Immunol. 2011;157:65-72.  

Okamoto M, Matsuda H, Joetham A,et al. Jagged1 on dendritic cells and Notch on CD4 + T cells initiate lung allergic responsiveness by inducing IL-4  production. J Immunol.  2009;183:2995-3003.  

Joetham A, Okamoto M, Takeda K, et al.CD8 regulates T regulatory cell production of 

IL - 6 and maintains their suppressive phenotype in allergic lung disease. J Immunol. 

2011;186:113-20.  

Sato M, Okamoto M, Takagi Y, et al. Pulmonary cryptococcosis with a solitary focal ground-glass opacity on high-resolution computed tomography. Intern Med. 2004 ;43:117-9. 

Joetham A, Takeda K, Okamoto M, et al. Antigen specificity is not required for 

modulation of lung allergic responses by naturallyoccurring regulatory T cells. J Immunol. 

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Miyahara N, Ohnishi H, Matsuda H, Miyahara S, Takeda K, Koya T, Matsubara S, 

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Hashimoto N, Kawabe T, Imaizumi K, Hara T, Okamoto M, et al. CD40 plays a crucial 

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Matsubara S, Takeda K, Kodama T, Joetham A, Miyahara N, Koya T, Swasey CH, 

Okamoto M, et al. IL2 and IL18 attenuation of airway hyperresponsiveness requires 

STAT4, IFNgamma, and natural killer cells. Am J Respir Cell Mol Biol. 2007;36:324-32.